日本遠隔医療協会ワークショップ③遠隔医療サービスの事例紹介(1)

<日本遠隔医療協会ワークショップ(2016/9/18)シリーズ>
①遠隔医療の視座
②遠隔診療サービスの展望
③遠隔医療サービスの事例紹介(1)

今回の記事より、遠隔医療サービスの紹介をしていく。

<ポートメディカル>

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まず、ポート株式会社(以下ポート)の伊藤氏が、自社で展開している遠隔医療の取り組みとそのサービス、ポートメディカルの取り組みについてご講演された。

ポートは、元々は医療分野とは関係のないITベンチャー企業であったが、最近になってメディカル領域に参入した。「世界中に、アタリマエとシアワセを。」をミッションに、社会課題の解決を目指している。

ポートが展開する遠隔医療サービス、ポートメディカルとは、対面診療後に、インターネットサービスを利用し、医師の診療から薬の処方、受け取りまでを可能にするサービスである。医療機関側のコスト負担は0円であり、診療報酬手数料の一部を患者側が負担する仕組みとなっている。

また、ポートは遠隔医療に関する医学的な実証研究を行っている。1つは、日南市と共同で実施している当該市内の無医地区における遠隔診療の有効性に関する実証研究である。これまで片道40分かけて往診していた在宅診療を、遠隔診療によって実施することで直接の対面診療と同等の効果を得られないかを検証している。

遠隔診療「ポートメディカル」と宮崎県日南市、当該市内の無医地区における遠隔診療の有効性を共同実証(THE BRIDGE 2016/6/3)

もう1つは、東京女子医大と共同で行っている高血圧治療における遠隔診療と直接対面診療との比較実験である。目標症例数は450例、主要評価項目は家庭血圧値としている。

東京女子医大とポート、遠隔診療の実証研究開始(日経メディカル 2016/9/6)

推定人口4300万人と言われる高血圧者のうち、受診するのは約半数であり、治療によって血圧値が低下するのは更にその約半数である。そこで、診療を受けていない層に対して、遠隔診療によってアプローチを試みる。

<ヒフミル君とメミルちゃん>

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次に東京医科歯科大学の竹村氏が、ヒフミル君とメミルちゃんについてご講演した。ヒフミル君とメミルちゃんは皮膚や眼疾患の診療に悩む医師を支援する為に始まった。

これらを運営会社であるエクスメディオは、日本初のDtoD(Doctor to Doctor)の診断支援ベンチャーとして、皮膚(皮膚科)と目(眼科)に特化したDtoDサービスを提供している。現在は、機械学習の技術を用いた皮膚疾患の自動診断について研究開発も進めている。

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(出典:AppStore)

ヒフミル君・メミルちゃんは、専門医と非専門医をむすぶサービスである。専門医が非専門医へ専門的なアドバイスをアプリで提供する。これにより、病院の業務の効率化、医師にとっては診断・治療の効率化・正確化につながる。

ヒフミル君・メミルちゃんのアプリの入力は簡単に出来るようになっている。写真を撮影し、問診項目を入力するのに、早い人で約1分程度で完了するそうだ。

専門医からの返答は、平均25分以内に返って来るので、ほぼ外来診療の時間内に回答を得られるという。現在、利用している医師からもサービスに対して好感を得られており、一般内科を中心に幅広い科に利用されている。

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(出典:AppStore)

ヒフミル君・メミルちゃんに登録する地域の専門医が多くなれば、専門医を紹介したり、遠隔地でも適切な診断や治療が出来るなど地域医療にも貢献出来る。

内科医が皮膚や目の疾患を相談された時、なかなか専門医と同じレベルで診断をするのは難しいため、皮膚科や眼科を紹介することになる。

皮膚科に紹介すべき疾患には、例えば、悪性黒色腫、ボーエン病などの悪性腫瘍が様々あるが、一般の専門医が診断するのが難しい。

そこで、ヒフミル君を利用することで、皮膚疾患を正確に診断することができ、皮膚科にも紹介がし易くなる。ヒフミル君は、皮膚科に紹介する疾患は必ずコメントのなかに皮膚科紹介を強く促すようにしていると言う。

また、今後は人工知能を用いた自動診断にも着手する。現在、回答可能な質問に対しても平均回答時間が25分までかかる。また、あまりにも質問が多過ぎると、人手でやっていてはいずれサービスが立ち行かなくなる。これを改善する為に人工知能を活用する。

まずは、専門医による診断と皮膚科の疾患の画像を集め、データ収集する。そこで、人工知能の開発の精度向上によって、ある程度のデータ水準を目指す。

ここで、人工知能技術の支えとなるのが、画像認識技術である。昔はとることが難しかった撮影でも、カメラの精度が上がったことで撮影出来るようになり、画像データそのものの質が向上してきた。この画像データを集め、DeepLearningを用いることによって、88%以上の精度を達成した。

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(出典:総務省)

ただし、日本では、皮膚科・眼科の先生も沢山日本にはおり、人工知能をすぐに活用するのは難しいため、発展途上国の医療にむけて人工知能による自動診断を展開することも考えているようだ。

日本で得た知見をもとに、海外の皮膚疾患・目の疾患で困っている人を助けることで、海外の世界医療の底上げが出来ないかと考えているという。

会場からは、ヒフミル君に対する好評価の声があがった。内科医は皮膚の疾患を患者さんに相談されるとまず診断結果を出さざるを得ない。そんな時、ヒフミルを使うと診断結果がかなり是正される為、重宝しているという。

<メドピア(firstcall)>

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メドピアの代表取締役の石見氏が次にご講演された。石見氏は、1999年に医学部を卒業後、医師としてのキャリアを積み、2004年に会社を起業。2014年には、現役医師兼経営者としては日本史上初の東証マザーズ上場を果たした。

メドピアは医者向けの会員サイト(登録、利用は無料)を運営しており、医師向けのプラットフォームが事業の主となっている。10万人以上の会員を持っており、国内医師の3人に1人がメドピアの会員ということになる。所属や年代による分布の偏りも無く、会員の属性は日本の医師全体のほぼ縮図であると言える。

石見氏は起業したきっかけを話された。石見氏が医学部を卒業した頃、医療事故や隠蔽事件があいつぎ、医療不信が社会問題化していた。

医療訴訟の件数が右肩上がりで伸びており、医師が疲弊し辞めていくケースが後を断たなかった。(立ち去り型サボタージュという言葉が生まれたのもこの頃である。)

そこで、医師を支援することで、結果的に、患者さんを助けることになると考え、これを実現する為に会社を運営していると、石見氏は述べた。

現在は、メドピアのプラットフォームをいかして、限られた数しかいない医師を適切に配置し、時間効率を最適化することを目指している。

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(出典:firstcall)

メドピアが運営するfirstcallも医師の時間効率を改善する為に行っている。

遠隔医療には、病院に行く前の段階で病気の予防や未病、発病時の相談を受ける「遠隔医療相談」と、病院で初診を受けて以降の継続した診療を続ける為に、直接の対面診療と組み合わせて行う「遠隔診療」の2つがある。

firstcallは遠隔医療相談のサービスである。(遠隔診療と遠隔医療相談の違いは前記事を参照)

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firstcallの画面。会員登録し、相談したい医師を選択すると、予約時間を選択する画面に移動する。

 

firstcallのサービスの流れは以下の通り。まず、登録医師が相談に対応出来る時間を予約枠として登録しておく。

予約枠に対し、患者が医療相談を申し込み、現在の困っていることを問診票に記入し伝える。

予約時間になるとビデオチャットによる相談が開始される。相談が終了すると、最後に決済が行われる。

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firstcallのテスト通話画面

最後に石見氏は、遠隔医療のブームを一ブームで終わらないように継続する必要があると述べた。

継続可能な事業にするということは、株式会社にとっては収益をあげるということ。その為、遠隔医療のサービスも継続可能な事業にしていかなくてはならない。

また、医療はそれにエビデンスがあるのかを求められるため、破壊的イノベーションはいらず、持続可能なイノベーションが必要であると石見氏は述べる。

遠隔医療のサービス自体はSkypeなど別のビデオチャットでも出来るサービスであるが、遠隔医療の価値や有効性を評価する為にエビデンスがあるのかどうか考える必要がある。

次回、後半の講演者についても紹介する。

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