日本遠隔医療協会ワークショップ④遠隔医療サービスの事例紹介(2)

<日本遠隔医療協会ワークショップ(2016/9/18)シリーズ>
①遠隔医療の視座
②遠隔診療サービスの展望
③遠隔医療サービスの事例紹介(1)
④遠隔医療サービスの事例紹介(2)

前回の記事に引き続き、遠隔医療サービスの事例紹介をしていく。

<新六本木クリニック>

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新六本木クリニックの来田氏

 

新六本木クリニック院長の来田氏が講演された。新六本木クリニックは、2016年1月に設立され、精神科、心療内科、内科を担当している医療機関である。

 

同クリニックでは、主に保険診療を扱っている。メドレー社の遠隔診療ソリューションCLINICSを利用し、「予定された診療」について遠隔診療を行っている。

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オンライン通院システムCLINICS

 

また、来田氏は遠隔診療の対象疾患は原則制限していないと述べた。投薬が必要な患者には処方箋を発行するため、当初は疾患名を明示する必要があると考えていた。

しかし、一旦は、精神疾患においては疾患名を原則制限せず、身体診察が必要ない病状の方であれば、再診以降の病状が安定した上で遠隔診療の対象にしようということになった。同クリニックで主に対象とするのは、鬱病圏、統合失調症圏のものであるが、特にこの疾患を外すということは考えていないという。

 

 

同クリニックでは、厚労省の通達などを踏まえて、急性期には遠隔診療を行わないとし、病状、病期で遠隔診療の判断をしている。

急性期には、投薬の細かな調整、容態が急変した時などに対応しないといけない等、想定される初期の状態変化については、遠隔診療を利用しないことにしている。逆に、治療が良好に進み、病状が安定した経過を辿っている場合には再診以降を遠隔診療の対象と判断するとしている。

患者の病状が安定した場合、クリニカルパスとして今後の12ヶ月の治療見込みというものを患者様側に示し、心理神経検査や血液検査等の検査を行うタイミングで来院を促しているという。

それ以外で、前回通りの薬の処方を行う場合は、次の診察をオンライン診察か対面診察で行うかを患者さんに選んでもらっているようだ。現在は、慢性期の病状が安定している方を対象に遠隔診療を行っており、処方箋による投薬も既に始めている。遠隔診療に関するエビデンスが確立されてくれば、より幅を広げていく予定であるが、現在は安全な運用を進めているそうだ。

実際に遠隔診療を開始してみて、いくつかの課題が分かってきたようだ。まず、予定されない保険診療はどうするのか?不調時対応の確立をどうするか。

例えば、不調時は受診を促すのかどうか、自分達が往診するのか、もし往診が難しいようであれば救急対応するのかといった問題がある。現時点では往診対応しなくてはいけないケースは無かったが、今後予想外のケースが増えた場合、検討が必要になる。

最後に診療報酬の問題を挙げていた。遠隔診療では精神科専門療法(通院精神療法など)が算定出来ない中で運用している。すると、保険診療で算定出来ない分、オンライン診察の方が金額が安くなってしまう。

金額も安く患者も通院しなくてもいいということになると、患者様からオンライン診察を要望されることが多くなり、患者様の足が病院から遠のいてしまう可能性がある。

そこで、オンラインで受診する際の金額を通常の対面診療より高く設定することで、患者様の受診行動をコントロールし、診療を途切れさせないようにするよう工夫している。同クリニックでは、遠隔診療の費用を高く設定する為に、選定療養費の予約料を一部徴収している。

(参考リンク:精神科クリニックが挑戦する遠隔診療、見えてきた成果と課題 新六本木クリニック――選定療養費で受診行動のコントロールも(日経デジタルヘルス 2016/10/15))

 

<CLINICS>

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続いて、CLINICSの取り組みについて、株式会社メドレーの法務統括責任者である田丸氏が講演された。

メドレーは遠隔診療サービス以外に、JobMedleyという医療介護分野の求人サイトと、介護のほんねという介護施設の口コミサイトを運営している。遠隔診療サービスのリリースにあわせてオンライン病気事典MEDLEYも開始。1500の病気と5000の症状を紐づけて、患者様がより深く広い視点で疾患について調べられるようにしている。

 

(出典:メドレー)

(出典:メドレー)

 

2016年2月に遠隔医療ソリューション「CLINICS」をリリースし、全国100以上の医療機関に採用されている。CLINICSは、予約、問診、診療、決済を全てオンライン化したサービスであり、薬・処方箋を患者の自宅に郵送することも可能である。通院する負担を軽減し、継続的な治療を支援する。

 

新六本木クリニックのCLINICSのオンライン予約画面

新六本木クリニックのCLINICSのオンライン画面

 

メドレーは、7名の医師、田丸氏を含め2名の弁護士のメンバーで、CLINICS倫理委員会という組織を作っている。遠隔診療は新しく生まれた取り組みであり、サービスの展開にあたり、法律の解釈の問題などがその都度あがってくる。そこで、診療の質を下げない形で遠隔診療を運営するために、日々の課題について、医学的、法律的な解釈、考え方をディスカッションしている。

「納得出来る医療を提供する」がメドレーの社是となっているので、診療の質がおろそかにならない為に診察行為の部分に関して医療者側、法律家側から見ても納得出来るものを提供する様、日々意見交換をはかっているという。

 

(出典:Wantedly)

(出典:Wantedly)

 

遠隔医療相談、遠隔診療など様々ある遠隔医療の種類の中でも、CLINICSで取り組んでいる対象は遠隔診療である。医療行為、診察行為を遠隔診療でリプレースしても問題が無い部分に関して導入する。

田丸氏はCLINICSが目指す遠隔診療の姿として、3つのメリットを取り上げた。

 

①治療開始/継続率向上

治療継続率を上げ、患者様にとっても受診へのハードルを下げることによって、金銭的・時間的・精神的障害を下げる。治療中に脱落してしまう人、自覚症状の無い生活習慣病の患者、医療機関を受診しなくてもいいと考えてしまっている人達の受診率を挙げることによって、より治療が継続する世界を広げていく。

②患者満足度の向上

患者満足度の分かり易い例としては、「病院に行かなくていい」、「待ち時間が少ない」ということが挙げられる。しかし、オンラインでは、直接の対面診療のように目や口の中をみてもらうことが出来ない。そのうえで、どうフォローアップすれば患者様の満足度を維持したまま遠隔診療を提供出来るのか日々考えている。

③遠隔診療ならではの質の向上

遠隔診療ならではの診療の質の向上もあると思われる。例えば、精神医療の分野では、オンラインの方が患者が饒舌になったり、正確なフィードバックを受ける場合がある。オンラインの方が忌憚なく話せるケースもあるようだ。

 

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(出典:メドレー

 

CLINICSは様々な診療科に対応しているが、特に一般内科をはじめ、慢性疾患の治療やフォローアップでの利用が多いようだ。他には、精神科以外にも、小児科での利用、整形外科の骨粗しょう症外来(薬の処方)、皮膚科も多い。

 

現在では、カメラ自体の性能も上がっているため、CLINICSのサービスの中で、身体の同じ箇所を定期的にカメラで撮影し、診察を行い、薬を処方することが出来れば、患者にとっての利便性があがり、医療の質もあまり下がらない。

 

田丸氏は、「オンライン化出来る部分は、今後ますます遠隔診療が当たり前の時代が到来するだろう」と述べる。予約システムを対面診療の患者にもオンライン診察の患者にも使ってもらうことで、予約枠が対面診療とオンライン診療の患者とで混在するのが当たり前になる。医療機関側も、あまりオンラインと対面を意識せず使い分けるような仕組みづくりをしていけば、オンライン診療の導入にむけての心理的ハードルが下がるだろう。

 

メドレーは、CLINICSをはじめ、診療、治療、処方のど真ん中の領域を取り組んでいるが、医療版の乗り換え案内を提供しようとしているようだ。

納得した形で医療体験を終えるという目的(終着点)に対して、どれだけ様々な選択肢を提供出来るか。

 

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オンラインの医療情報の提供、メドレーで提供しているものとしてMEDLEY症状チェッカーというのもあるが、症状をチャット上で入力すると候補となる疾患名が表示される。これも、医療体験の目的地に到達するまでの最短経路を示すものとなっている。

田丸氏は、「遠隔診療を利用した方が早く、適切に、安く医療を提供することが出来れば、患者も納得した形で医療体験を終えることが出来るようになるだろう」と述べた。

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