日本遠隔医療協会ワークショップ⑤遠隔医療サービスの事例紹介(3)

<日本遠隔医療協会ワークショップ(2016/9/18)シリーズ>
①遠隔医療の視座
②遠隔診療サービスの展望
③遠隔医療サービスの事例紹介(1)
④遠隔医療サービスの事例紹介(2)
⑤遠隔医療サービスの事例紹介(3)

前回の記事に引き続き、遠隔医療サービスの事例紹介をしていく。

 

<CureApp>

 

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次に佐竹氏が講演された。CureAppは、ハードデバイスの医療機器だけでは治療出来ない疾患を、ソフトウェア=スマートフォンアプリを使って治療することを目指している。同社は出来て3年目のベンチャーであり、佐竹氏と、鈴木氏の2人で共同代表をしている。

佐竹氏は、日本での臨床経験を積んだ後に海外に留学した時に、医療現場におけるITの活用を目の当たりにし、日本でもやってみたいという気持ちが強くなり、2014年の春に帰国した後にCureApp.incを起業した。

 

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(出典:CureApp)

 

共同代表の鈴木も医師であるが、7~8年程プログラミング経験があり、医師の思考回路が分かるエンジニアということでタッグを組んでいる。

CureAppは、医師が患者の疾患を治療をする為にスマートフォンアプリを使う世界を目指している。これまで、疾患の治療の為には、薬を処方したり、デバイスを使った手術が行われてきた。

これらが効果を発揮し辛い領域でスマートフォンアプリを使って病気を直すことが出来る世界を目指す。従来の方法で治療出来る疾患は沢山あるが、治療出来ていない疾患も沢山ある。血圧や糖尿病の薬は飲んでいれば良くなるが、飲むのを辞めると状態が戻ってしまう。アプリケーションを活用することで、直しきれていなかった疾患に対し、新たな治療効果を出すことを目指している。

(出典:)

(出典:Wikipedia)

 

例えば、禁煙治療に関しては、ニコチン依存症という疾患がある。ニコチン依存症は、薬を使った治療を1年間続けた場合は、3割の人が改善するが、7割は失敗してしまう。海外では、アメリカの医療機関ではアプリケーションの活用が進んでおり、知る限り100以上の医療機関で活用されているという。日本の医療現場でもアメリカにならって多くの医療用アプリケーションが出てくるだろうと佐竹氏は述べた。

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(出典:iTunes)

 

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(出典:iTunes)

CureAppは、ドクターと患者の間のクラウドシステムが基盤となっている。システムは、ドクター側のアプリケーション、患者側のアプリケーションと分けている。

ドクター側は、患者に関する医学的なデータをクラウドにアップロードしておく。患者側は、自分の病気、状態、服薬状況等を記入し、患者に関わる全ての医学的データだけでなく日常のデータをクラウドに収集する。収集したデータを自社独自のアルゴリズムによって解釈を行い、患者の病気の状態を、医学的根拠に基づいた診療ガイダンスを流す。

今まで医師は基本的に病院の中で治療計画を立ててきたが、患者の容態は病院外においても容態が良くなったり悪くなったりしている。もちろん、難しい判断を求められた時にソフトウェアで解決出来る部分は限られているが、医師の診断の中で定式化出来る部分もある。診療ガイドラインに沿ってある程度定式化出来るところは、有効性と安全性を加味した上で、医師の判断をある程度アルゴリズムに代替することも出来る。

現在実証研究を行っている例は主に2つ。1つ目は、慶応義塾大学病院で1年間実施した臨床研究である。慶応義塾大学病院の呼吸器内科学教室と共同で開発したニコチン依存症向け治療アプリを用いた臨床試験を行った。現在はいくつかの医療機関と連携し、アウトカムを取る介入試験を行っている。

世界で毎年600万人が死亡するニコチン依存症をアプリで治療、医師2名が取り組む「キュア・アップ」(THE BRIDGE 2015/10/28)

2つ目は、東京大学病院と共同で行っているNASHの治療アプリケーションの開発、実証である。NASHは生活習慣病の一種である脂肪肝がさらに進行したようなものだが、治療薬がなく、生活習慣の改善が治療に効果を発揮する。そこで、ソフトウェアを活用して、病院側も治療をサポートする。

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(出典:iTunes)

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(出典:iTunes)

 

ニコチン依存症の場合、薬剤を使った治療は、3ヶ月で6万円くらいかかるが、お金をかけても改善出来た人は少ない。疾患のうち心理的な要因によって治療が出来ていないのだ。

そこで自分達のアプリケーションを介して、より改善していく。遠隔診療と現状の外来をどう組み合わせていくかについては、今の現状の外来はそのままやって頂くが、1ヶ月に1回、2週間に1回の外来患者が病院に来ていない期間の患者の状態にフォーカスしていく。

病院に受診しても、家に帰ってからは、医師や看護師が介入出来ず、患者自身が疾患と孤独に向き合わなくてはならない。そこで、CureAppを用いて在宅で出来ることをサポートする。

医学的、アカデミックなガイドライン、論文ベースのエビデンスをコンテンツに盛り込み、容態に応じてガイダンスを提供する。医師側の画面では、常に患者の状態を把握することが出来る。

佐竹氏自身もアプリケーションを利用する中で、様々なメリットを感じてきたと言う。まず、問診する時にいちいち1ヶ月何を食べてきたのか、と聞かなくてもその場でアプリを見ればすぐ分かる。患者にとっても自分の状態を医師にすぐ分かってもらえる。診察の時間の短縮にもつながる。実際に、臨床研究の結果もかなり良い結果があらわれているという。

最後に、佐竹氏は、「ソフトウェアを医療に活用することで社会に貢献出来る側面もあるのでは」と述べた。特に、医療費の問題を解決するきっかけになる。薬やデバイスは以前のものよりどんどん高価になる。アウトカムがよくなっても、医療費はどんどんあがっていってしまう。しかし、ソフトウェアを使った治療であれば、費用対効果が大きくなる。

例えば、アメリカで活用されている糖尿病の治療ソフトで薬やデバイスと同等の治療効果があがっている。また、薬やデバイスの開発コスト(1000億程度)と比べて、ソフトウェアの開発は1/10~1/100程度の金額になるという。ソフトウェアを使った治療プログラムと既存のプログラムの有効性を比較すると、疾患により服薬や手術が有効な疾患もあり、ソフトウェアが向いている疾患もある。

海外の糖尿病治療アプリBlueStar(出典:How BlueStar® Diabetes can help)

 

佐竹氏は、医療ソフトウェアの業界を作り、新しい産業を作っていきたいと考えているという。

<ポケットドクター>

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MRTの馬場氏が最後に講演された。馬場氏が医療に関わるきっかけとなったのは、自身が病院に入院したことがきっかけだった。馬場氏は、子供の頃から小児ぜんそくに罹患し、医療機関に通院していた。また、交通事故にあい病院で一命をとりとめた経験があった。

そこで、自らもどう医療に貢献していくかを考え、27歳の時にセブンイレブンのような365日営業のコンビニクリニックを東大の近くに作り、同時期にMRTという会社を作った。

医師がそばにいる安心感を世界に広めたいと思い、医療に関わっている。東京大学医学部附属病院の医師の相互扶助組織を母体としてスタートし、関東圏、全国に展開し、365日医療現場を支えている。

 

MRTが展開する様々なサービス(出典:MRT)

MRTが展開する様々なサービス(出典:MRT)

 

東京大学医学部発医療ベンチャーであり、90%以上の口コミで利用されている。リアルな医師のプラットフォームとして機能し、述べ10万人の医師が利用し、150の大学医局そして医療施設に利用されている。取締役の70%が医師であり、徹底した医療現場主義を進めている。

16年前から会社をはじめ、医師の80万件のデータベースがある。3つのプラットフォームを展開、医師×医局・企業、医師×医療機関、医師×患者をつなぐ。

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ポケットドクターの画面①

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ポケットドクターの画面②

 

現在、MRTはポケットドクターという遠隔医療サービスを展開している。遠隔医療サービスは現場の医師の声からあがった。MRTのサービスは「電話再診」という保険診療の制度を遠隔診療に置き換える考えである。昨今、スマートフォンなどの携帯デバイスの通信速度、性能が格段に上がった。この状況のもとで、現場の医師の声をくみながら、サービスを展開していった。

 

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MRTの遠隔医療サービス、ポケットドクターは遠隔診療、遠隔医療相談の2つの顔を持つ。

 

具体的には2種類の遠隔診療そして遠隔健康相談を展開する。サービスの開始前から沢山の方から賛同の声を頂き、現在は300以上の医療機関に登録して頂いている。健康相談については60の診療科に対応している。(患者様向けの画面には12科が表示される。)

MRTの遠隔医療サービスは主に在宅医療にフォーカスしている。とある先生の調査によれば、登録患者の1%は、何らかの電話要請があり、往診せざるを得ないという状況があった。電話対応だけでも限界があるため、face to faceで見て頂き、患者やご家族と、移動中でも相談が出来る仕組みを作った。

術後の経過などを知りたい時に、今までは遠方の方にも「また外来に来て下さい」と言っていた。もちろん外来は必要だが、遠隔診療により遠隔からアドバイスすることも出来る。また、医師側にとっても、遠隔で相談出来ることで、直接の対面診療の間をつなぐことが出来る。

遠隔診療は、仮設住宅の被災者の支援にも活用出来る。仮設住宅に済んでいる被災者の方にも医療機関への移動、物資の制約がある。そこで遠隔診療でもフォローすることが出来る。125名(11月現在は236名)の人に参加して頂き、健康相談にのっていただいている。

参考リンク:オプティムとMRT、「ポケットドクター for 震災支援版」で医師による遠隔健康相談を無償提供(WirelessWire News 2016/4/20)

遠隔診療を進めていく上での今後の課題は、遠隔診療に必要な人材の確保であろうと考えている。MRTは、16年前から臨床の先生方のおかげでやってきた。これまで蓄積してきた臨床歴などのデータベースをもとに遠隔診療にひもづけて、サポート出来ればと考えていると言う。

ポケットドクターの将来の形として、①デバイス連携や②AIについて馬場氏はとりあげた。(①については、オプティムと連携した取り組みが先日プレスリリースで発表された)

②のAIについては、ビッグデータを活用して、あくまでも医師の診断の補助ツールとして、取り組んでいく。

馬場氏は、一環して、医師の先生方の支援のもとにMRTが成長してきたことを強調し、医師が築いてきた医療のエコシステムを崩さずによりよいサポートを行っていきたいと述べた。

会場からは、子育て中の親御さんで、働きたいけどフルタイムで働けていない人を是非遠隔医療サービスに活用して頂きたいという声があがった。

(シリーズ終わり)

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